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[Chapter 01] 過去(思い出)は胸に、歩は未来へ

"あの日"から一週間、その日がやってきた。

この日のアークス士官学校内は普段以上に騒々しさを増していた。
卒業を昨日迎えた士官候補生達は、本日正式にアークスとして登用される。
彼らは各々の決意・目標・運命・野心を持ってこの場を一斉に旅立ち、
新たなステージに活躍の場を移すことになるのだ。
士官学校付属寮内ではこれまで共に過ごしてきた戦友や寮関係のスタッフと、
外では後輩や教官たちと別れを惜しんだり、お互いの健闘を祈り合う風景が見られた。
そう、これからは今まで助け合ってきた戦友はもういない。
今まで慕ってくれていた後輩たちはもういない。
今まで実地試験でいざという時に助けてくれた教官達はもういない。
今までの様にアークスに生活を守られる立場ではもういられない。
正式にアークスへなるということはそういうことである。

寮内3Fの一番隅っこにある一人部屋を使用していた男。
彼もそんな正式にアークスへと登用された者の一人である。
"ライナス・ギルバート" クラスはハンター。スカイブルーの目を持ち、
真っ黒な髪をアップバンクにしているパンキッシュなヒューマンの男性である。
いつも通りヘアスプレーでバッチリと髪型を整え「うっし!」と気合を入れた。
彼にとって朝のヘアセットは、寝起きのON/OFFを切り替える役割を果たしている様だ。
「ここで過ごすことはもうないか……世話になったな、ありがとよ」
そして昨夜まとめた荷物を背中に背負うと、今まで生活してきた部屋に一礼しその扉を閉めた。
慣れ親しんだ少しくすんだ廊下を進み、螺旋階段を速足で降りるとエントランスに辿りつく。
そこには未だ多くの士官候補生が残っており、名残惜しそうに今までの思い出話や
これからの抱負について熱く語り合っていて何かのお祭りを彷彿させる賑わいである。

そんな中でも彼は部屋の鍵を寮内スタッフに返すべく、
エントランスカウンターを目指しその足をスタスタと動かしていた。

「おーい、ライナス。お前もう行くのか?」
「ああ、お前これから元気にやっていけよ!」
「お前もな!」

「ライナス、思い出話にで花を咲かせないか?」
「この前やっただろ。俺は行くぜ、じゃあな」
「もう前を向いてるって訳か、どっかで会ったらよろしくな」

途中何人かに呼び止められたが、軽い挨拶と手を振って返すだけに止めた。
そう、彼の思考は過去を懐かしむことではもうない。
思い出話ならここ数週間で有り余るほどの数した為、悪言いかただがもう飽き飽きしている。
そんな彼はこれからのアークスとしての未来に向かっているのだ。
カウンターにはいつもと同じく、少しふくよかなおばちゃんが番をしていた。
「おや、ライナスちゃん。もうみんなと話す必要はないのかい?」
「あぁ、おばちゃん。思い出話とかだったら、もう何回もしたさ。
今更またやっても同じような話の内容なだけだと思うからな」
「そうかい、ライナスちゃんはもうこの先を見ている様だね~」
「多分そうじゃないかと俺も思っているよ、なんせ今日から正式アークスだ。
気合入れていかないとな、俺はスンゲーアークスになってやるからな!」
彼はそう言いつつ"ビシッ"とお決まりのサムズアップをおばちゃんにしてみせた。
「ホッホッホ、期待しておくよ。そんじゃ行ってらっしゃい」
「おう! おばちゃんも元気でな!」
彼女と最後の会話を交わしたライナスは、必要なくなった鍵を手渡して寮を出た。
一瞬「ここに来るのも今日で最後か」と思い更け一言呟いたが、
周りで起こっている送別の余興や教官の送別の歌など気にせずに校門へと一直線に歩み始めた。
結局のところ、"あの日"以来いつもの4人が一堂に会することはなかった。
各々これからの準備や手続きに追われて忙しい日々を過ごしていたからである。
そして今日という士官学校最後の日、別れの挨拶もせずに4人は旅立つことになった。
しかし、ライナスは少しの寂しさも名残惜しさ、不安さえも感じることが無かった。
(あいつ等なら大丈夫、俺が大丈夫な訳だから……な)
長い時間を共に過ごした戦友、彼らを心配する必要などライナスにはなかった。
そう心の中で呟きつつ歩いていると、何時の間にか校門を抜けていたらしい。
彼は少し歩みのスピードを抑え後ろを振り向こうとしたが、すぐにまた歩みを速めた。

――過去=後ろを懐かしむ必要はない、前=未来に向かって行く――

そう、まず彼が目指すべきは配属される部隊の扉。
Ship:Nauthiz 独立部隊属 第一〇五番隊の扉だ。
Insult Reaper=侮辱狩り、元アークス狩り リュディガー・グラッツェル、鬼子。
未だに全容を理解していない部隊ではあるが、それを含めて彼はワクワクしていた。
どんな先輩アークスがいて、どんな任務があって、どんな生活になるのか。
その答えはこれから身をもって体験していくことであろう。
(さてと、それじゃShip:Nauthizに行くか。確かキャンプシップポートの場所は……)
キャンプシップポートとは、その名の通りキャンプシップ(小型宇宙船)が集まる場所。
単にキャンプシップと言っても、物資の運搬やシップ間における人身移動、
アークスならば各惑星への移動手段と様々な種類がある。
今回彼が向かうキャンプシップポートは、当然シップ間における人身移動を取り扱う場所である。
(んー、歩いてイケる距離か。あんまり今手持ちないし……歩くか!)
最近のお別れドンチャン騒ぎ会などで出費が重なり、彼の残りメセタは少ない。
いつもならブルーな気持ちになる彼だが、何故か晴れ晴れとした気分でキャンプシップポートへ向かい始めた。

キャンプシップポートへたどり着いたライナスは、卒業の日に配布されたパスを
カウンター係りの女性に「はいよっ」と見せて改札をスルー。
主要十Shipのホームへと歩みを進め、Nauthizへ向かうキャンプシップを探した。
久しぶりの他Ship移動ということで少しウロウロと迷ってしまったが、
なんとか目的のShip:Nauthiz方面行きキャンプシップへと乗り込むことができて安堵する。
座り心地のよいリクライニングチェアに背中を任せて、彼はアップグレードされた携帯端末を
手に取った。これから向かう部隊で唯一顔を会わせ交流をしている者に連絡のメールを入れる為だ。
(えーっと、[今ナウシズ行きのキャンプシップに乗り込みました。運行状況によりますが、
恐らく今から3時間程でそちらに着く予定です。]っと。これで送信)
あて先を間違っていないか指さし確認をして、間違っていないことを確認すると端末を閉じた。
「(ふあ~あ……後は到着まで仮眠でもしておくか~)」
両手を"グンッ"と伸ばしてあくびを一つ、そのまましばしの眠りに。
しかし、そんな彼を邪魔するかの如く"ピロリ~ン♪"と着信音が響いた。
(っとー返事が早いな……どれどれ)
先程閉まったばかりの携帯端末を再度開き、受信のフォルダーを開き確認をする。

[寝ぼけて先輩アークスにシツレーの無いように! 後は……特にないよ、以上!]

(……マライアかよ、てっきりあの人からの返信かと思って開けたのに)
折角先方に無礼のないように眠気を押し返して端末を開けたのに、送り主がマライアとは。
"マライア・オグバーン"。赤みの強いオレンジ色の髪を邪魔にならない程度のセミロングにカットしたヒューマンの女性。
士官学校時代は制服の下に着用しているパーカーのフードを頭にちょこんとかぶっているのが特徴で、
男っぽいサバサバとした性格から両性ともに友人が多い校内屈指の活発女子であった。
その彼女は強化から"Ship:Ansur 独立部隊属 第〇七八番隊"に配属が決まっているのであった。
(ったく……こっちは今から寝ようと思っていたのに、えーっと)
愚痴を呟きながらライナスは返信の文に"滅びろ(*‘ω‘ *)"と絵文字付きで記入、送信した。
(俺の安息の一時を一瞬でも奪った罰である、この一言で許してやろう……ふあ~あ)
今度こそ寝ようと端末を閉じようとするとまた"ピロリ~ン♪"と着信音が響いた。
(……)
無心で受信フォルダーを開き予想通りのマライアからの返信を見てみた。

[クタバレ]

もういいだろう、勘弁してくれ(笑)。そう思い微笑した彼は携帯端末の電源をスリープに変更すると、
今度こそ一時の安らぎ空間へとその身を任せていった。

◇◇◇

「Hey! リュディガー。そういやー言い忘れてたことがあったぜ」
全身を真っ白なパワードスーツで武装した者が任務から帰ってくると、
卓上で資料作成の作業をしていた中年アークスに声をかけた。
「おう~戻ってきていたか。それで忘れていた事案とは何だ?」
陽気そうな口調で質問を返し、一旦作業を行う手を止めて席を立つ。
そのままホットコーヒーを入れに近くの簡易キッチンへと向かいつつ、
パワードスーツの男の返事に耳を傾け始めた。
「まぁーRoughな気持ちで聞いてくれ」
「うむ、それはいつも心掛けているつもりだから心配ご無用!」
会話をしつつ、淹れたてのコーヒーをカップに注ぎ元の席へ戻ってきた。
「ん~今日もまた格別な香りだ~♪」
鼻歌交じりにご満悦の彼は、口にそのあっつあつの
ホットコーヒーをゆっくりと流し込み始めた。

「今日の後3時間後に新メンバーがウチの部隊に加入するからヨロシクだぜ!」

「ブフフフゥゥゥゥゥーーーーーー!? #%*@!? アッツ! アッツ! 消化班ー!!」

「Wow! 大喜びだなリュディガー! Hey! Come'on! 誰かバケツにありったけの水くんで持ってこーい!」

口から、さらにカップに残っていたコーヒーを勢いよくぶちまけ、
その場で激しくのたうち回る中年アークス。
それを見て嬉しそうと表現・認識するパワードスーツの男。
傍から見るとワザとやってそうなリアクションをするアークス2人。
そんな彼らが所属する一つの部隊の名は"Ship:Nauthiz 独立部隊属 第一〇五番隊"。
ライナス・ギルバートが配属されるこの部隊は、彼を迎える準備など全くしていなかった。



NEXT→[Chapter 02] Ship:Nauthizと一〇五番隊
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